動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)の2次予防では、超高リスク患者においてLDL-C<1.4mmol/L(55mg/dL)の達成が推奨されている。一方で、LDL-Cを良好に管理しても動脈硬化の進展や心血管イベントの再発は起こりうる。今回、経皮的冠動脈インターベンション(PCI)後にLDL-C<1.4mmol/Lを達成した冠動脈疾患(CAD)患者におけるASCVD再発の臨床的特徴を検討した結果、主要心血管イベント(MACE)は6.2%に発生し、動脈硬化性疾患(polyvascular disease:PVD)がMACEと強く関連する一方、PCI後2ヵ月時点の治療中LDL-C<1.0mmol/L(40mg/dL)の達成はMACEリスク低下と関連していたことが明らかになった。本研究結果は、国立循環器病研究センター 循環器内科の片岡 有氏が8月28~31日にドイツ・ミュンヘンで開催されたEuropean Society of Cardiology 2026(ESC2026、欧州心臓病学会)の2次予防のセッションで発表、Journal of Clinical Lipidology誌2026年8月号にも掲載された。
本研究は、2017年1月1日~2022年8月31日にPCIを受けたCAD患者を対象とした多施設共同後ろ向き観察研究である。PCI後2ヵ月時点のLDL-Cデータがない患者、3年時点の臨床フォローアップがない患者、PCI後2ヵ月以内にMACEを発症した患者、非動脈硬化性のCAD患者などを除外。PCI後2ヵ月時点でLDL-C<1.4mmol/Lを達成した患者を解析対象とし、MACE発生例と非発生例の臨床背景、脂質低下療法、リスク因子管理を比較した。主要評価項目は、心臓死、非致死的心筋梗塞、非責任病変に対する臨床的適応による冠動脈血行再建からなるMACEとした。
主な結果は以下のとおり。
・解析対象は780例で、平均年齢70.1歳、男性81.7%であった。高血圧は73.7%、脂質異常症は65.2%、2型糖尿病は37.1%、慢性腎疾患は50.3%に認められ、心筋梗塞既往は11.9%、多枝病変は31.0%であった。
・観察期間中央値1,632日(四分位範囲[IQR]:1,011~2,502)で、MACEは48例(6.2%)に発生した。内訳は、心臓死1.1%、非致死的心筋梗塞1.4%、非責任病変に対する臨床的適応による冠動脈血行再建4.7%であった。
・LDL-C<1.4mmol/L達成後に発生したMACEの81.2%(39/48例)は、PCI後2年以内に発生した。また、心臓死9例はすべてPCI後6ヵ月以内に発生した。
・MACE発生例では、非発生例と比較してPVDの割合が高かった(72.9%vs.17.3%、p<0.001)。下肢閉塞性動脈疾患(LEAD)もMACE発生例で多く(54.2%vs.4.0%、p<0.001)、CAD+脳血管疾患(CVD)+LEADの併存も高頻度であった(12.5%vs.1.6%、p<0.001)。一方、従来の冠危険因子および多枝病変などの臨床的特徴に有意差はみられなかった。
・PCI後2ヵ月時点で、全体の94.8%がスタチン、73.3%が高強度スタチンで治療されていた。エゼチミブの使用はMACE発生例で非発生例より少なかった(45.8%vs.63.2%、p=0.023)。PCSK9阻害薬の使用割合は、MACE発生例4.1%、非発生例5.1%であった(p=0.770)。
・PCI後2ヵ月時点で治療中LDL-C<1.0mmol/Lを達成していた割合は、MACE発生例で非発生例より低かった(16.7%vs.33.2%、p=0.018)。治療中LDL-CはMACE発生例で数値的に高かった(44.1±10.5 vs.41.6±9.3mg/dL、p=0.074)。
・多変量Cox解析では、PVDがMACE発生と独立して関連していた(ハザード比[HR]:10.74、95%信頼区間[CI]:5.65~20.39、p<0.001)。一方、PCI後2ヵ月時点の治療中LDL-C<1.0mmol/Lの達成はMACEリスク低下と独立して関連していた(HR:0.37、95%CI:0.17~0.80、p=0.010)。
・脂質低下療法の強度を追加調整したモデルでも、PVD(HR:11.02、95%CI:5.80~20.93、p<0.001)およびLDL-C<1.0mmol/L(HR:0.39、95%CI:0.18~0.85、p=0.019)の関連は一貫していた。
・PVDの表現型別では、CAD単独を基準とした場合、CVD併存はMACEリスク上昇と有意に関連しなかった(HR:1.63、95%CI:0.46~5.75、p=0.447)。一方、LEAD併存はMACEリスク上昇と強く関連し(HR:21.03、95%CI:10.74~41.17、p<0.001)、CVD+LEAD併存でも同様であった(HR:23.75、95%CI:8.51~66.26、p<0.001)。
・PVDを有する162例では、32.1%がLDL-C<1.0mmol/Lを達成していた。PVD患者において、PCI後2ヵ月時点の治療中LDL-C<1.0mmol/Lの達成はMACE発生頻度の低下と関連し(Log-rank p=0.032)、多変量解析でもMACEリスク低下と独立して関連していた(HR:0.36、95%CI:0.14~0.87、p=0.024)。
本研究結果について著者らは、LDL-C<1.4mmol/Lを達成したCAD患者においても心血管リスクは残存しており、とくにPVDはMACE発生と独立して関連していたとまとめた。また、PCI後2ヵ月時点の治療中LDL-C<1.0mmol/LがMACEリスク低下と関連していたことから、CAD患者におけるASCVD再発予防では、さらに低いLDL-C目標を考慮しうると結論付けた。
(ケアネット 土井 舞子)